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所謂「付き合う」というのは、何を以って定義とするのか。
反町に聞けば「チュウした瞬間からじゃね?」と返ってきた。
だとすれば現在、俺と若島津は「付き合って」いる。小5の頃からの長い「付き合い」を経て、つい先日から新たに「付き合い」始めた。なんだか妙な話だが、ようするに幼なじみ、親友、チームメイトに加え「恋愛関係」がスタートしたわけだ。
あの雪の日の夜、散々思い悩んだ末俺はあいつにキスを迫った。ぶん殴られるかと思いきや意外にもあいつはすんなりと目を閉じて、俺の暴挙とも言える要求を黙って受け入れたのだ。
半信半疑のまま差し出された唇に俺は吸い付いた。いや、かぶりついたと言うべきか。ロマンチックとは程遠い、欲望丸出しのキスだった…と思う。なんだかもう夢中で、必死で若島津の唇を貪った…ような気がする。
なぜそんな曖昧なのかというと、キスをしながら俺は若島津のベッドで寝てしまったからだ。
信じられないことに、あいつを腕に抱きながら寝落ちしてしまったのだ。
朝目覚めると俺は若島津に介抱されていた。
「多分インフルエンザじゃないか、だって。」
すでに制服に着替え白いマスクをした若島津が俺の顔を覗き込んで言った。いつ差し込まれたのか、服の下から聞き覚えのある電子音が鳴る。
「39度ジャスト。」
「マジでか…」
「河辺医院、8時半から受付やってるから…って一人で大丈夫?俺…」
「いや、行ける。…今何時だ?」
「6時半。」
「おまえはもう行かねえとな…朝飯ちゃんと食ったか?」
フウと小さく溜息をつくと、若島津は俺に陣取られた自分のベッドの端っこに腰掛け、力無く呟いた。
「…食べた。」
マスクで大半を覆われた横顔からは表情を読み取れないが、どうやら機嫌は良くないらしい。
「なあ…ごめんな。」
「…どっちが?」
「どっち…て。」
「キスのこと?」
「いややや…えーと…何て言ったらいいか…キスは…俺は後悔してねえ…けどおまえは、怒ってんじゃねえかと。」
「……。」
「あと、インフル移してっかも。」
若島津の目元がほんのり赤くなった。
「怒らないよ。怒るなら最初からキスなんかしない。…もしかして夕べ言ったこと、聞こえてなかった?」
「え…?」
「もー、なんでこんな大事な時にインフルなんかなるんだよ。」
「…んなの、しょうがねえだろ…」
情けない気持ちと、刻一刻と蝕んでくるウィルスの威力に俺は返事をするのもままならなくなってきた。よりによって大事な夜に、ゾッコンな相手とのキスの途中で、しかも何やら重要なセリフを聞き逃してしまったらしいという大失態。より一層の倦怠感が俺を襲う。
「もう一度…頼む…」
キスの最中に言うセリフなんて決まってる。俺は譫言のように何度も何度も囁いた。「おまえが好きだ」と。
若島津が返してくれた言葉はなんだったのだろう。この流れでいくと期待してしまうではないか。
「今言っても日向さん、また記憶飛びそうだから。熱下がってからにする…。」
「……」
反論する気力もなかった。普段めったに熱など出さない分、俺は発熱に滅法弱い。その上インフルという最強のウィルスが猛烈な勢いで体中に爆ぜ、肉体のみならず精神までもが完全に敗北してしまった。
残念ながらこの時の記憶はここまでである。
気が付いた時には、枕元に河辺医院の薬袋と吸引式の薬が、そして頭にはまだ氷の溶けていない水枕と、額には冷えピタが貼ってあった。
どうにも起き上がれそうにない俺に、にっちもさっちも行かず寮母さんが河辺先生に頼んで往診に来てもらったそうだ。
その日、俺は隔離状態で便所以外は部屋を出ることを許されず、若島津はというと他所の部屋に連れていかれ顔を見ることもかなわなかった。
俺達が「付き合い」始めた記念すべき日は、凶悪なウィルスによって無惨にも引き裂かれてしまったのだ。
幸いというか奇跡的というか、俺に端を発したインフル騒動はその後誰に感染することなく、5日もするといつも通りの日常に戻っていった。
グラウンドと学校と、そして寮を往復する変哲のない日常。不思議なくらいに何も変わらない。
反町の言うことに基づくならば、俺は若島津と「付き合って」いる。…はずだ。
けれども隔離され引き離された時間が再び俺達の関係をフラットにしてしまったのか、若島津の態度は以前と全く変わらず、幼なじみの親友でチームの仲間、それ以上でもそれ以下でもないように思われた。
あれだけ決死の思いで踏み越えたつもりでいた一線が、実は無情にも足元に絡まっているような。
あまりにも普通すぎて、迂闊にそういうムードに持って行けない。あいつが部屋に戻ってきたら、抱きしめてキスして、そしてもう少し先に進めたら、などと色々思いを馳せ浮かれていたのに。
それなのにあいつときたら、戻ってくるなり俺が休んだ間のノートを盛大に積み上げ、数日中にそれを全部移せと言う。それが終われば今度は他の部屋の奴らも集めて学年末テストの攻略、それからもうじき迫った引退試合のことや後輩たちへの申し送りや引き継ぎノートの作成、次から次へとやることが涌いてきて、甘いムードになんてなる隙もない。
気付けばあの雪の日から2週間、俺は若島津とキスどころか目と目を合わすことさえままならなかった。
想いが通じたと感じたのはやはり思い過ごしだったのだろうか。俺の告白にあいつが返した言葉、実は期待したものとは全く逆の答えだったのだろうか。
確かに試験勉強も大事である。いくら中高一貫とはいえある程度の学力がないと進級させてはもらえない。それは特待生の俺だって例外ではない。全員揃って高等部に進級しなければ、サッカー部の戦力低下にも繋がるだろう。
やるべきこともちゃんと分かってはいるのだが、隙のない若島津の態度が俺を不安にさせ落ち込ませる。
こういうのを惚れた弱みと言うのだろうか…。
5日間寝込んだだけで目の回るような忙しさに翻弄され続け、しかしそれもようやく今日、テストの最終日を終え一段落を向かえた。
「日向さん、あさって部活終わってから、下に行かない?」
あれ以来初めて若島津が勉強と部活の話題以外を口にした。下とは駅前のことで、丘陵に位置する東邦からバスで20分程下った街を寮生達はそう呼ぶのだ。
「部活の後なんて、そんな時間ねえぞ?2時間とか…」
「うん、充分。」
「他、誰だ?」
「え?」
「テストも終わったことだし、またゾロゾロついてくんだろ。」
「…二人きりだけど。」
俺のテンションが上がった。
「買い物付き合って欲しいんだけど、いい?」
「いいぜ。」
「サンキュ。」
若島津が笑った。そんな顔を見たのは久々な気がする。なんだか急に抱きしめたくなって、俺の顔に緊張が走った。
それを察知したのか、若島津はいそいそと本を開いて勉強を始めた。
「テスト終わったのにまだやんのかよ。」
「日曜はパーッと羽伸ばすから、その分今やっとかないと…。」
「羽伸ばすってもどうせ門限までだろ。」
「…うん、そうかもしれないけど…。」
若島津は卓上カレンダーを手に取り、ちょこちょこと何かを書き込んだ。恐らく明後日の予定だろう。
二人でバスに乗るなんて久しぶりだしなんだかデートみたいで浮かれるが、俺としては今この瞬間におやすみのキスでもして眠りにつきたいところだった。
しかし2週間のインターバルは俺を再び臆病にさせ、机に向かう若島津の背中をただ眺めるしか出来なくしてしまった。
「俺、もう寝るわ。おやすみ。」
「うん…おやすみ。」
以前と少しも変わらない若島津の「おやすみ」が、なぜか俺の胸を締め付けた。
日曜日。
4時までの練習時間を10分前倒しに切り上げ、俺達は学校の裏門のそばにあるバス停へと急いだ。一時間に2本しかないバスを逃すと30分は待ちぼうけを喰らってしまう。
とりあえず練習着を脱ぎ、学ランを羽織っただけの着の身着のままの格好である。教科書や汚れたシャツをごっちゃに詰め込んだスポーツバッグは、バスの小さな座席ではひどく嵩張るものだった。通路側に座った若島津はカバンがはみ出さないように気を使っているのか、窓際の俺に若干寄り掛かるように座っていた。
曲がりくねった坂をバスは車体を振りながら下って行く。揺れる度に若島津の左腕がぐいと押し付けられ、俺は胸のあたりがざわざわとした。
駅前に到着すると、若島津が「こっち」と言って腕を引いた。日曜日というのもあってか街は人で溢れごった返していた。
すれ違う数多くの女性達が、若島津のことをチラ見していく。全国大会で名を馳せたとはいえ所詮は中学生、恐らくサッカーとは全く関係なく、若島津の容姿がずば抜けて端正だから目を引くのだろう。
改めて俺は若島津の横顔を見た。同時に若島津も俺を見る。
「どうかした?」
「おまえ、スゲエ見られてんぜ。」
「…誰に?」
「通りすがりの、オバサンとか…女。」
「日向さんだろ?あんた有名人だもん。」
絶対違うと思ったが、敢えて反論はしなかった。思わず目に止まるほどの綺麗な奴を俺は連れて歩いているのだと思うと優越感を感じずにはいられなかった。できるなら、こいつは俺と付き合っているんだと自慢して回りたいほどだ。けれどただ一度のキスだけで、それも日が経つにつれ記憶が容赦なく薄れていく今、断言できる自信などないに等しいのだが…。
「ここ、入ろう。」
カジュアル系の洋服屋の前で若島津は足を止めた。言われるまま店内に入ると、雑多な服や小物が所狭しと陳列してあり他の客とすれ違うのも一苦労だ。
寮と学校の往復だけで日常はTシャツとジャージで過ごすことが殆どの俺にとってはどれも必要を感じない品物ばかりだった。
若島津は、と一瞬見失い店の奥に進んでいくと、あいつはなにやらを物色していた。
両手に持って見比べているのはマフラーだった。俺に気付いて「こっち」と手招きすると、それらのマフラーを代わる代わる俺の顔の下に宛がい、じっくりと眺めた。
「なんだよ、鏡ならそこにあるだろ。自分に合わせろよ。」
「うん…やっぱ違うな。こっちかな。」
聞いちゃいねえ。
違う色合いのものを再び俺に宛がう。マネキン扱いされるのも面白くないので、俺もヤツに似合いそうな明るい色合いのマフラーを手に取って若島津の肩に乗せた。
「おまえはこういう色の方が似合う。」
あてずっぽうだったが、その赤が基調のマフラーは思いの外若島津の肌の色にマッチしていた。
「そう?」
「ああ、似合う。」
本心でそう思った。しかし考えれば色白で顔の小さな若島津はおそらく何を合わせても着こなしてしまうに違いないのだ。
「じゃあ、これも買う。」
「も、て?」
「待ってて。」
そう言って若島津はさっき俺に宛てた渋目の色合いのマフラーと二つを持ってレジに向かった。
結局自分が選んだのを気にいってるんじゃないか…。だったら無駄に二つも買わなければいい。俺は若島津の贅沢な買い物ぶりに少し嫌な気分になった。
若島津の買い物というのはそれだけで、目的が終わればあとはブラブラするだけである。
小腹が空いたのでファーストフード店でポテトとコーラを買い、駅前広場のベンチで食べながらとりとめのない話をしたりした。寮の部屋での会話とさして変わりはしないが、こうしてわざわざ時間を作って二人でいることがすごく特別のような気がした。何より部活を早引けするなんてのは東邦に入って以来初めてである。監督に許可を申し出た時の周りの反応を思い出すと今でもバツが悪い。
いつもは誰よりも遅くまでやってるのだからたまには許されてもいいはず、と普段は生真面目な若島津が言い出したことだった。しかしこんなに早く用事が済むんなら、最後までやって出てきても充分だったかもしれない。
「日向さん…今日さ、学校でなんか貰った?」
ポテトをかじりながらぽつりと若島津が言った。
「……いや?」
なんのことやらさっぱり分からず、暫く考えてから俺は答えた。
「そ。」
短く返すと若島津はニッコリ笑った。
変なヤツ。でも、かわいい。
相変わらず行き交う女達の目線が小蠅のようにヤツの周りをブンブンたかっていた。初めのうちは自慢に思えたりと余裕だった俺も、段々と嫌気が差してきた。
独占欲ってやつだろうか。
最後のポテトを口の中に差し込むと、もう次のバスで帰ろうと促した。
バスの前方の時計を見ると5時半を回っていた。6時半の門限には充分間に合う。俺は安心してバスの揺れに身を任せた。
特に会話もなく、あと4つ、あと3つとバス停を通過する度頭の中で数えていた。次は公園入口。バス停には誰も立っておらず、運転手が通過しようとした時、若島津が慌てて「降ります!」と手を挙げた。
「え?」
「すみません、ブザー鳴らすの忘れてました。」
「え、マジここで?」
「俺払うから日向さん先降りて。」
帰りは通路側に座っていた俺を無理矢理押し出すと、若島津はせっせと小銭を数え運賃箱に入れた。
バスはこの先公園の周囲をぐるりと回り東邦へと向かう。つまりこの公園を突っ切れば学校の裏門に出るわけだ。しかし野球場やテニスコートもあるような馬鹿でかい公園である。端から端まで歩くのに20分はかかる。黙って乗っていれば5~6分で着いたものを、若島津は一体何を考えているのやら。
「あ、バス代…」
「いいよ、今日は付き合わせちゃったし。」
「けど、マックもおまえ払ったし。」
「俺が誘ったんだもん。…さ、帰ろ。」
若島津は上機嫌に歩き出した。
ついさっきまで西の方はオレンジ色をしていたが、みるみる辺りは夜の顔になっていった。2月の公園は人影も殆どなく、木々の向こうに見えるネットの方からテニスボールの音が響くくらいだ。気温も下がってきて、学ランひとつではさすがの俺も身震いしそうだった。
「日向さん、寒い?」
「ああ、冷えてきたな。」
そう言い終わるが早いか、いきなり後ろからギュッと首を締められた、…と思ったがそうではなかった。マフラーが俺の首に巻き付けられたのだ。それは見覚えのあるものだった。
「うん、似合ってる。よかった。」
「…これ、俺の?」
「日向さん、今日何の日か知らないだろ。」
「……バレンタインか。」
今日は日曜ということもあり、色めき立つ生徒達を目にしなかったせいかそんなイベント事はすっかり頭の中から消え去っていた。
そういえば、毎年校門で待ち伏せている他校生にも出会わなかったのは、早引きして裏門から出たおかげか。そこまで気付いて改めて若島津を見ると、さっき俺が見立てたマフラーをぐるぐると首に巻き付けているところだった。
「これ、それとおんなじ種類だよね。色違い。」
若島津はそう言うと少し俯いた。
「寮の前になったら、俺が外すから…」
そしてゆっくりと歩き始めた。
俺はどうしようもなくなって、とっさに後ろから若島津を抱きしめた。何かを言おうとするが胸が一杯で言葉が出ない。
暫くの間、俺は黙って若島津を抱きしめ続けた。
「俺、ズルイよね…校門で日向さんのこと、待ってた子達いっぱいいただろうに。寒いのにね。」
「…おまえ、それ全部分かっててか…。」
「毎年嫌だった。あんたがプレゼント渡されて喜んでるの見んの。」
「別に喜んじゃいなかったろ。しょうがねえから…。」
「うん、しょうがなかった…。でも、今年は……」
「……キスしてえ。」
若島津の肩がピクリと小さく跳ねた。
この2週間、ずっと言いたくても言い出せなかったセリフだった。まさかこんな場所で本気でしようとは思わなかったが、今の正直な気持ちがポロリと口を衝いて出てしまった。
俺は若島津の背中の温もりにうっとりと酔いしれていたが、突然するりと身を交わされた。反応が追っ付かないまま、腕を掴まれ遊歩道から外れた雑草の中に引き込まれる。
驚いてる間に、若島津は俺にちょんと軽くキスをした。
「……」
「……」
無言で見つめ合う。そしてどちらからともなく、再び唇を寄せ合い口付けた。互いの唇をはむように深く合わせ、初めて舌を絡ませた。息苦しくて少し唇を浮かすと、若島津が小さく「好きだよ」と言った。
俺はキスを止めて若島津を見詰めた。
「ずっと好きだった。日向さんのことが…好きだった…。」
目を潤ませて若島津は言った。
俺は軋むくらいに思いっきり若島津を抱きしめ、そして乱暴過ぎるほどのキスを何度も繰り返した。
若島津の腕が、腰が、やさしく俺に絡み付いてくる。ずっと触れたかった体が今、腕の中にある。いっそこのまま成り行きに任せて…
そう理性が吹っ飛びかけたその時、どこからかキャンという犬の鳴き声が聞こえて、俺達は慌てて体を離した。
近所の住人が犬の散歩をしているらしい。誰が見ても怪しくないよう、服の乱れがないかを確かめる。冷静に振る舞いながらも体中の脈はドクドクと暴れまくり、自然と息が上がった。俺達は何事もなかったかのように遊歩道に戻ると、犬を連れた中年が通り過ぎるのを黙って見送った。
「そろそろ門限までヤバイかな…。」
「…どうだかな。」
「もう、帰る?」
「ん…。」
まだ公園の半分も歩いていない。もっとずっとこうしていたいが、俺達はそれほど自由でもなかった。ゆっくりとした足取りで学校へ向けて歩き出す。
「日向さん…」
「ん…」
「…続きは…。」
「……続き?」
若島津を振り向くと、マフラーで顔の下半分をすっぽり隠し、ぼそりと小さな声で「夜」と言った。
これ以上聞き返すのは野暮だと思い、俺は黙って若島津の手を握った。
その夜、俺達はひとつのベッドの中にいた。
初めての経験に戸惑うことばかりで、正直俺は格好悪かった。緊張と興奮が過ぎて若島津を全然リードできず、何度「ごめん」と言ったか知れない。
それでも俺達は、どうにかこうにかそれらしい行為にたどり着くことができた。
ひとつになり、結ばれた。
ただの幼馴染みから、友人から、それ以上の関係に進むことができたのだ。逆に言うと、もう後戻りは出来なくなってしまったのだ。
「後悔してない…?」
俺に散々な目に合わされ、ぐったりとシーツの中に沈み込んでいた若島津が、気掛かりだったことを先に口にした。
「それ、俺のセリフ…。」
「…してないよ?後悔。」
「ホントか?」
「だって俺、こうなりたくて日向さんにくっついて来たようなもんだから。」
そう言って若島津は笑った。
「今は、粘り勝ちした気分。」
「おまえは変わり者だ…。俺なんかのどこがいいんだよ…」
「…どこがいいとか、そういうんじゃなくて…日向さんじゃないとダメなんだ。俺が。」
「……」
「…あんたの全部が好き。」
特上に気の利いたセリフをぐるぐると頭の中で探したが、結局は何も思い付かず、俺は溢れ出すありったけの思いを込めて若島津を抱きしめた。
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