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続・妄想日記 その日は朝からソワソワ落ち着かなかった。 若島津が「ここで暮らす」と決意してくれてから数回、練習の後にクラブハウスのロビーで待ち合わせて話し合ったことがある。 しかしながら。 「んじゃまあ、よろしくな」 昼過ぎになり、ようやくスポーツバッグひとつ背負って若島津がやってきた。 あの時以来アイツがここに来るのは2度目だ。顔を見るなり抱きしめたい衝動にかられたが慌てることはない。これからは毎日、朝起きて夜寝るまで(そりゃ日中は別行動だが)このキレイでカワイイ若島津と一緒にいられるのだ。 ああ幸せ! 「荷物、ほんとにこれだけなのか?」 「うん、意外と質素だろ。驚いたか?」 らしいというかなんというか。アイツの荷物は段ボールにして5箱くらいで、それが本や衣類など彼の生活の全てだという。まあ、俺もたいして変わらないけどな。 ずっとチームの寮に世話になっていたからこのマンションに越してくるまで電化製品といえばCDラジカセくらいしか持っていなかったし、相も変わらずクローゼットはガラガラだ。 自慢じゃないが年棒もそれなりにもらってるんだが根っからの貧乏性でムダな買い物はいっさいしない質なのだ。若島津と暮らしたい一心で買い揃えた家電も、量販店でのまとめ買い現金払いで相当値引いてもらった。それもかなりの勇気がいった。 「日向は今日一日オフだっけ」 「ああ、昨日の試合見てくれたか?BSでやってたろ」 「あ、ごめん。結果だけ。寮の連中が送別会やってくれてさ、抜けられなくて…。ロスタイムで逆転ループシュートだって?すごいな」 「まあな。頑張っちゃったよ俺。今日からオマエと住めると思うとスゲー力湧いてきてさ!」 若島津がパッと赤くなった。思ったことをすぐ口に出さないと気が済まない俺と違ってアイツはどこか慎ましいというか、古臭く言えば武士みたいなヤツなんだよな。 外国暮らしで「俺が俺が」みたいなヤツらばっか見てたからこういうストイックさがまた俺の庇護欲をくすぐるのだ。 「来て早々なんだけど、2時に練習場いかなきゃならないんだ。荷物そのままで悪いけど」 「動けなくなるまでコッテリ絞られてこいよ。なんなら俺が迎えに行っておぶって帰るぜ?」 「あはは、冗談」 練習場まで徒歩3分。若島津が俺と暮らす決意をしたのもそのオイシ過ぎる条件が3割、いや5割、…いや7割くらい、かな(ちょっと自信がなくなってきた)とにかくサッカー中心の生活に魅力を感じたからだろう。 「若島津…」 俺の動きを察知して一瞬身構えたが、唇はすんなりと許してくれた。 ふんわりとやわらかいキス。この感触、一週間ぶりだ。長くなると押さえがきかなくなりそうだから、俺は断腸の思いでえいっと離した。 「ケガしないようにな」 「…うん」 ヤツはポッと赤くなると、いってきますッと早口に言って出ていった。 く~~かわいいぜ! 今夜は引越し祝いだ。腕によりをかけてウマイもん作ってやろう。若島津は見かけに寄らず結構な大喰らいだから作り甲斐があるのだ。俺は冷蔵庫の中身を確認しながらリストを作り、買い物に出かける準備をした。 「ただいまー」 夕方になり、練習を終えた若島津が帰って来た。 「あ~やっぱ近いなあ。すげえラクチン」 見ればほとんど練習着のまま、首からタオルをかけた状態である。かろうじてスパイクは脱いでいたが‥。 几帳面な性格かに見えて意外とおおざっぱという、この見た目とのギャップがまたたまらない。 それにうっかり聞き流しそうになったが、たしかに今、若島津は「ただいま」と言った。 俺はじんわりとヨロコビが込み上げてきた。いつか言わせたいランキング上位のこのセリフをこんなにも早く聞けるとは! 「お…おかえり!風呂沸いてるぞ。先に入れよ」 嬉しさのあまりおかえりってとこがちょっと上ずってしまった。 なんか新婚さんみたいでいいじゃん?こういうの。 「いいの?じゃあお先にもらうね。」 ニコッ。 無防備に笑顔を見せる若島津に、自分が今それを独り占めしているのだと思うと俺は有頂天になった。 だって若島津のこんな顔、チームじゃ絶対見られないもんな。 自分が一番下っぱで年下だからいつだってアイツは緊張している。俺みたいにふてぶてしくないから常に周りに気を使っているのだ。もっとリラックスすればいいのに‥そうすればもっといいプレイができるのにっていつも思う。 まあ人に言わせりゃそれが普通で俺がちょっとふてぶてしすぎるらしいのだが。 若島津は軽い足取りでバスルームに入っていった。 もうすでにこのマンションはアイツにとって「帰る場所」なのだ。合鍵も渡した。住民票も移した。 あとは…是非とも結ばれたい。 身も、心も。 それって欲張りすぎなのだろうか。いや、素直に俺はアイツに触れたい。もっと深く、アイツを知りたい‥。 俺は真剣な顔で悶々としながらピーマンの細切りに精を出した。 俺は小学校の時オヤジを亡くしていて、お袋は朝から晩まで働きに出ていた。 その方が表向きにも健全だし問題はないのだが、若島津の本心が果たしてどうなのか…。 でも、好きじゃなかったら一緒に住みたいなんて思わないよな。少なくとも俺に好意があるとみていい。いや、かなり参っているはずだ。でなきゃ男の俺にキスされてあんなにメロメロになるはずはない! ここは図太くポジティブシンキングでいくしかない。 「俺が当番の時、こんなの作れないぜ?」 ガツガツと片っ端から料理を取りながら若島津が言った。 「なんだってかまわねえよ。つかインスタントじゃなければな」 一応プロのスポーツ選手として体調管理は気を付けないといけないので、できるだけインスタントものは避けるようにしている。俺も25を過ぎたら本格的に栄養士をつけようかと考えているが、今はまだ好きなものを食べたい盛りだし、幸い自炊も苦じゃないので当分は今のスタイルを楽しみたい。 「日向をガリガリにさせないように俺も料理の勉強するよ。それにしてもウマイな。オマエ、いい嫁さんになるぜ」 「なに言ってんだ。嫁さんはオマエだろ」 やべえ、思わず口走ってしまった。ヤツはちょっと変な顔をしたが「旦那の方が家事得意だと嫁は得だな」といってサラリと流した。そしてウマイウマイと言っては豪快に皿のものをたいらげていった。
メシを作ってもらったから片付けは自分がするといって若島津は皿洗いを始めた。その間俺は風呂に入り、明日からのアウェ-出発の為(明後日は祝日でリーグ戦も変則的な日程になっている)その支度を済ませた。 「そっか。一人っきりになるのなんて初めてだな。なんか緊張する」 ずっと寮暮らしで一人になるのに憧れていたのにいざとなると寂しいもんだな、といって笑った。 一人が寂しいのか、俺が居なくて寂しいのか、俺はアイツの口から確かめたくなって、横に腰掛けるとと肩を寄せた。 「俺だってオマエと会えなくて寂しいぞ」 「たった2日だろ?おおげさ」 「もしかしたら帰るの、その次の日になるかもしれないな」 「…え」 一瞬、なんで?というふうに俺を見た。その目は少し不安気に揺れた気がした。 「他に泊まる家でもあるのかよ」 「まあ、俺にも色々と付き合いがあるしな」 ちょっと含みのある言い方をしてみる。すると突然、若島津が立ち上がった。 「ここのコトは気にせずどうぞごゆっくり。しっかり留守番しておくから」 それじゃ明日も早いんで、と言ってスタスタと愛想もなく部屋へ行こうとする。 あれ?ひょっとして‥なんか、怒った?それって…ヤキモチ?? 「待てよ、冗談だって!どこにも寄らずにまっすぐ帰るに決まってるだろ」 俺は慌ててヤツの腕をつかんで引き寄せた。 振り向いた若島津は、なぜかびっくりしたような顔をしていた。心なしか目が潤んでいるような…。 「若島津…?」<br> 「あ、焦った…マジで。日向、モテそうだから…他に女とかいても不思議じゃないし…。なんで俺、ここに来ちゃったんだろうって一瞬…」 若島津はそのまま黙りこくってしまった。俺はモーレツに反省した。アイツの本心が知りたいばっかりにくだらないことを言っちまった。バカだ、俺…。 「スマン…!」 俺はアイツを力一杯抱きしめた。俺にはオマエだけなんだ!オマエだけを大切にするって心に決めたんだ! 若島津は力が抜けたように棒立ちのまま抱きしめられていた。そして俺の肩に額を預けると、 「まいったな…俺、こんくらいのことで動揺するなんて…」 自分でも驚いたように呟いた。ヤツの思わぬ反応に俺の心は踊った。こうなったら言葉ではっきりと若島津の気持ちを確認したい。ちょっと恐いけど、知りたい。 「若島津…俺は、オマエが好きだ。オマエは…俺をどう思ってる?」 「俺は‥日向が…」 「うん」 ゴクリ。 「俺も‥す、…好き」 顔を真っ赤にして答えてくれたその返事に俺は昇天しそうだった。好き、好き!俺のことが! 次の瞬間、俺はアイツに口付けた。少々乱暴すぎるくらいガツンといった。明日からちょっとの間会えないかと思うとなおさらこの唇が愛おしくて、何度も何度も角度を変えて貪った。少し離しては「好きだ」と言い、またキスしては「愛してる」と囁く。若島津はもう耳まで真っ赤だ。腰を抱くとアイツの手が肩にしがみついてきた。 俺はそのままちょっとずつ前進して寝室にたどりつくことに成功した。部屋の大部分がベッドなおかげで、ドアを開けるとすぐさま体重を思いっきりかけて押し倒した。 「アッ」 マットに弾んで思わず声が上がる。そして俺はこの前と同じような体勢で若島津を押さえ込んだ。アイツの体温が、匂いが、全てが俺を刺激する。俺の欲求はすでにマックスを越えていた。 「若島津…オマエが欲しい。抱きたいんだ……ダメか?」 一瞬、ヤツの瞳がゆらりと泳いだ。とまどっている目だ。 そりゃそうだよな…男が男に体を開くなんてことは、常識的な若島津にとっちゃ天地がひっくり返るくらいの一大事だもんな。俺だって、ほんのちょっと前までは男を抱きたいなんて夢にも思ったことはなかった。 俺にとっても天変地異なのだ。 どちらかといえば俺達のこの関係には及び腰に見えた若島津だったが、さっきの焦燥感がそうさせたのか、キュッと唇を噛むと潤んだ目で俺を見据え、そして言った。 「お、俺も…欲しい。日向が……」
見た目は結構がっしりしてて男っぽいのに、裸の肌に触れると意外にやわらかくてなめらかでしっとりしてて、俺はすぐさま若島津の体に夢中になった。そしてこれまでにないくらいテンパッていた。 俺が触れるとピクンと揺れて、先がじんわりと濡れてきた。 「もうやだ…」 まるで多過ぎる宿題にネを上げる中学生みたいに溜息まじりにヤツが言った。イヤなわけはない(こんなになってるし)けどよっぽど恥ずかしいらしく、両手で顔を覆ってしまった。それをいいことに俺は一気に根元まで口に含んだ。ヤロウのモノに俺がこんな施しをする日が来ようとは今年の正月には思いもしなかった。自分でもオドロキだ。 若島津が「ああっ」と言って腰を浮かした。 めちゃめちゃ感じてるっぽい。その反応に俺は嬉しくなって、ますます煽るように口を上下に動かした。こんなことなら自分がされてる時、どの角度がいちばん感じるのかもっとちゃんと見ておくんだったな。 先っちょからしょっぱい汁が溢れてきて俺はそれをしつこく舐めとってやった。若島津は泣いてるのか喘ぎなのか分からない声でウンウン言いながら、俺の髪の毛をやさしく指に絡めて腰をうごめかした。 もう、なにもかもが色っぽく扇情的だ。 肌がじっとりと汗ばんできて、ピンク色に上気している。いったいどんな顔で感じているのか確かめたかったが、今は目の前で絶頂間近のアイツのモノに集中することにした。 そして間もなく、体がヒクヒクと跳ねてナマ温かいものが俺の口内を満たしていった。 「あ…ああ…」 若島津の両腕がだらしなくシーツの上に投げ出され、時折余韻のように腰がピクンと揺れる。アイツの全てを唇でぬぐい取ってやる。決してウマイもんではなかったが若島津のものだと思えば全然平気だった。 「ごめん…俺、こういうのされたの、初めてだから……」 息も絶えだえに若島津が呟いた。 「俺だって初めてだ。‥気持ちヨカッタか?」 聞くまでもないと思ったが、こういう時の会話も大切にしないとな。 実をいうと俺のナニもかなりのとこまで昇りつめていて、正直苦しい。さっき若島津のを銜えてるだけでマジでイキそうだった。 自分のモノに直接触れてもいないのにここまでなるなんて…ホントウに好きな相手と触れ合える悦びと興奮を、俺は素直に感じた。 若島津は「うん…ありがと」と消え入るような声で言うと額の汗を手で押さえながらハアと息を吐いた。 アイツの横にぴたりと体を寄せて頬に張り付いた髪の毛を払ったりと、コトの後のスキンシップをしていると、まだ少し涙がにじむその瞳が俺を見上げた。 「日向は…?日向の、俺にもさせてよ」 そういって俺の股間に手を這わせてきた。わわっ、ヤバ、マジ?すげえ嬉しいんだけど! ずっしりとした俺のを、ゴツくて指の長いキーパーの手が包み込む。「デカいよね、アンタの」なんて言いながらゆっくりと扱かれた。 「く…はっ」 たまんねえ。若島津は俺の胸元に軽くキスしながら左手でナニを刺激する。 「俺さ、自分でする時、なぜかいつも左手なんだ。普段は全部右なのにこの時だけ」 な、なんちゅう刺激的な告白!ストイックで清潔感あふれる若島津からは「手淫」のイメージがどうしても湧いてこないが、ヤツも立派なオトコなわけだしそりゃあマスくらい掻くだろう。俺はその様子をちょっとばかし想像して、またしてもイッキに駆け上がりそうになった。 「ここを、こうやって…ゆっくりやると…スゴイ、感じるんだけど…日向は、どう?」 「ハア…ハア…うん、いい…」 オナニーする若島津……う、マジでヤバい。も、ガマンできねえ! 「若島津‥!」 俺は体を返して若島津にのしかかった。シーツに沈んだヤツの体を抱き込みながら深く口付ける。舌を差し入れて激しく貪ると手足からふんわりと力が抜けていくのが手に取るように分かる。もう、身も心も俺に預けてしまってる状態だ。 俺はようやく「若島津」を手に入れたんだってことを実感した。 もうすでに俺のナニはトロトロになっていて天然のゼリー漬けみたいだ。ここまで濡れまくったことなんて初めてで、いかに俺の若島津に対する欲望が凄まじいものかを思い知らされた気がして恥ずかしくなる。 入れたい…。若島津の中に。 凶暴な欲求が頭をもたげる。なんの準備もしていないソコにいきなりはムリだってことくらい、俺だって知ってる。その後のアイツのダメージを考えると気持ちが竦む。 でも、だけど。 ………。 真っ白になりかけた頭でようやく俺は決断した。 やっぱり、今日はムリだ。 若島津が大切だから。愛してるから。こういうことはちゃんと準備をして、時間をかけて、できるだけ体を傷つけないようにお互いが気持ちよくならないと意味がない。 俺は限界に達した自分のモノと、再び勃ち上がりかけたアイツのモノとを摺り合わせるように握ると、激しく腰を揺らした。 「ひゅ‥日向‥‥あっ」 一瞬若島津がとまどいの顔を見せたが、ゴリゴリとした刺激に痛いようなキモチイイような、ヘンな快感が生まれる。いつの間にか若島津の手も添えられて、次第に二人の息づかいが合わさっていった。 「ハッ…ハッ…フッ…」 ギシギシとベッドが軋む。ああ、もう、イク……! ほぼ同時に、お互いの腹の間で俺達は弾けた。 二人分の精液が合わさって、トロリと脇腹を伝ってシーツにしたたり落ちる。慌てて俺はティッシュをつかんで乱暴に数枚引き抜いた。流れるものを拭うとさらに数枚、若島津の腹にフワリとのせた。 「あのさ…その、…い、入れなくてもよかったの?」 2度もたて続けにイカされてちょっと蒼白気味の若島津がヘソに溜まった白い液を拭き取りながら、ちょっと言いにくそうに聞いてきた。膝を立て、足を開いたその格好が無防備だ。 「うん…よくガマンできたなって自分でも思う」 そのタラバガニのような足の間で胡座をかいて、べっとりと濡れた淫毛を丁寧に拭きながら俺は答える。 「俺達ってさ…、まずはサッカー有りき、だろ?」 「……」 「性欲にかられて、もし明日の練習でオマエがコーチに何かを見抜かれでもしたら…そんなの、よくねえじゃん。本末転倒ってやつだろ?俺達がこうして一緒に居ることの意味が元から崩れっちまう」 「日向…」 「それに」 俺は、重ねた枕を背もたれにして横になっている若島津の体の上を、ゆっくりと割るように這い上がって抱きしめると鼻の頭にキスをした。 「入れなくったって充分キモチよかったぜ」 「…日向」 ヤツの大きな掌が俺の顔を包む。チュ、と若島津の方からキスされた。 「俺、頑張るから。アンタに追いつけるように‥。まずはトップに。それから…」 「早く俺の後ろでゴール守ってくれよ。振り向いたらオマエがいるなんて、サイコ-じゃん?」 俺の守護神。俺の若島津。こんなに愛しちまった、俺の恋人。 はにかむように笑うアイツに、今度は俺がキスした。ちょっと甘くて、ディープなやつ。 再び俺達はベッドに深く深く沈んでいった。
それから半月後。 精神の安定と充実した性生活ってのは非常に密接な因果関係があると俺は思うのだ。
2006年4月19日 |